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非住宅木造建築の害虫リスクについて

非住宅木造建築の長期利用において、害虫被害は軽視できない重要な課題。シロアリやキクイムシは木材内部を侵食し、構造耐力を低下させる危険性をはらんでいます。また、ゴキブリやネズミが繁殖すれば、衛生面や利用者の安全にも悪影響を及ぼしかねません。

本稿では、非住宅木造に特有の害虫リスクと効果的な対策について詳しく解説しています。

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主な害虫リスクについて

非住宅木造で特に深刻な問題となる害虫はシロアリとキクイムシ。木材内部を侵食し、柱や梁などの主要構造材を弱体化させる木造建築の敵です。

シロアリは、針葉樹を含む幅広い木材を食害対象とするため、建物の倒壊リスクや修繕コスト増に直結する脅威となります。

キクイムシは乾燥が不十分な木材を好み、家具や内装材にも被害を拡大させていきます。

他にも注意が必要な害虫は、ゴキブリやネズミなどの衛生害虫・獣害。食品を扱う施設や多くの人が集まる建物では、安全性を脅かす深刻な要因となります。ネズミについては、配管周りや床下の隙間から侵入し、電線や断熱材をかじるケースも多数報告されています。

リスクの顕在化と背景

ある調査報告によれば、木造建築物や建設現場の約3割で害虫被害が確認されています。

被害の背景にある要因は、木材の乾燥不足や通気不良、高湿環境など。これらの要因が複数関係し、特に床下や壁内部、天井裏などの点検が困難な箇所で被害が多く報告されています。

また、建築用途や立地環境によっても害虫リスクは大きく変動します。たとえば、工場や倉庫のような大型施設では内部に湿気がこもりやすいため、被害が比較的発生しやすい傾向にあります。

学校や病院など、衛生面のリスクを避けたい建物でも害虫被害が少なくありません。材種や防蟻処理の有無、建物規模によっても被害の発生傾向は異なります。

こうした複合的なリスク要因を抱えているのが、非住宅木造建築の課題といえるでしょう。

具体的な影響について

害虫被害は外見からの判断が基本的に困難です。被害が内部で進行すると、建物の強度は気づかぬうちに低下していくおそれがあります。

不特定多数の人が利用する非住宅で耐震性能などに影響が出た場合、地震発生時の被害拡大を招くリスクも考えられます。また、万が一事故に至った際には、事業の社会的信用に影響が及ぶ可能性も否定できません。

なお、被害が発見された時点ではすでに補修範囲が拡大していることが多く、工事コストは高額化する可能性があります。工事期間の業務停止や稼働遅延など、コスト以外での経済的損失も甚大になるでしょう。

非住宅木造建築では、設計段階から防蟻処理や防虫材、換気管理などを取り入れること、および、定期点検を通じて被害の早期に発見することが不可欠です。

非住宅木造建築で注意すべきポイント

非住宅木造建築では、非住宅木造建築は、その規模や用途の多様性から、複数の害虫・獣害リスクが同時に発生する場合があります。シロアリ被害とネズミの齧害が重なれば、構造面と衛生面双方に深刻な影響が及ぶことでしょう。特にバックヤードや倉庫、床下や天井裏などは点検が疎かになりやすいため、被害の温床となる危険性があります。

また、配管や電気設備が集中する場所は湿気がこもりやすいうえ、害虫・害獣の侵入経路ともなる危険箇所。特に、展示室や機械室など用途が異なる空間を一体で持つ建物では、環境条件の違いからリスク管理が複雑化するため、対応も困難を極めます。

設計段階で点検口を設置したり換気計画を工夫したりなど、害虫被害を未然に防ぐ仕組みに取り組まなければいけません。

まとめ

非住宅木造建築における害虫リスクは、構造的安全と衛生環境の両面で無視できない課題です。シロアリやキクイムシによる食害は強度低下を招き、衛生害虫やネズミは利用者の安全や施設運営に直接影響します。

被害が進行すれば修繕コストや事業への影響も拡大するため、設計段階から防虫・防蟻対策を講じ、定期点検と早期発見体制を整えることが不可欠です。

施工から維持管理まで一貫した対策に取り組むことが、非住宅木造建築を長期にわたり健全な状態で維持する鍵となります。

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※1参照元:銘建工業公式(https://www.meikenkogyo.com/recruit/number/)2022年日本CLT協会調べ
※2参照元:一般社団法人日本CLT協会(https://clta.jp/partner/?this_partner_field%5B%5D=構造設計&searchText=