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木造の図書館

ただ読書をするだけの空間で終わらない、芸術作品のような木造建築の図書館が誕生しています。ここでは地域材を活用したり、建築基準法を考慮して建築された、木造建築の図書館の画像つき事例を特徴とともに紹介しています。

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木造建築の図書館の事例

みんなの森 ぎふメディアコスモス

みんなの森 ぎふメディアコスモス写真
引用元:みんなの森 ぎふメディアコスモス公式HP(https://g-mediacosmos.jp/cosmos/)

みんなの森 ぎふメディアコスモス写真
引用元:みんなの森 ぎふメディアコスモス公式HP(https://g-mediacosmos.jp/cosmos/)

延床面積15,444.23平方メートルの、大型図書館の事例です。一階部分は一部鉄骨造の鉄筋コンクリート造、2階部分は梁部分が木造の鉄骨造です。木材使用量のうち、91.28%が岐阜県産材で、日本の木工細工を連装させる県産ヒノキによる特徴的な木製格子屋根は、金華山の山並みに呼応して起伏をつけています。この屋根は120ミリ×20ミリの板材を最大で21枚重ねた構造で、手作業によって接着剤とビスで取り付けられています。

また室内のろうと状の傘と木製格子屋根を組み合わせることで、光や温熱環境の省エネルギー化を実現しています。

  • 所在地:岐阜県岐阜市司町40-5
  • 公式サイト:https://g-mediacosmos.jp/index.html

雲の上の図書館

雲の上の図書館写真
引用元:梼原町×隈研吾建築物公式HP(http://www.town.yusuhara.kochi.jp/kanko/kuma-kengo/town-library.html)

雲の上の図書館写真
引用元:梼原町×隈研吾建築物公式HP(http://www.town.yusuhara.kochi.jp/kanko/kuma-kengo/town-library.html)

延床面積1938.31平方メートル、一部木造の鉄骨造、地上2階地下1階、標高1,455メートルに位置する、建築家・隈 研吾氏が設計した図書館の事例です。梼原町の地域材を多用しており、外装の木造作、内装の構造木組み、フローリング・木造作に町産のスギ、内装のカーテンウォール方立てに県産ヒノキが使用されています。

特にメインとなる2階までの吹き抜けの天井にある梁のデザインが圧巻で、「森の中で本を読む」という図書館のコンセプトに沿った作りとなっています。ほかにもソファーを配置したラウンジや小部屋、子供の絵本コーナーなど、それぞれに趣を変えた木の空間が配置され、森の雰囲気の中で読書を楽しむことが可能です。

  • 所在地:高知県高岡郡梼原町梼原1212-2
  • 公式サイト:http://www.town.yusuhara.kochi.jp/kanko/kuma-kengo/town-library.html

福井ふるさと文学館

福井ふるさと文学館写真
引用元:福井県ふるさと文学館公式HP(https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/bungaku/index.html)

延床面積1,020平方メートルの、鉄骨造に内装木質化を施した事例です。既存の図書館内に、キューブ型の展示空間を設置する形で設計。

図書館として防火上の内装制限を受けるために、外観のルーバーには福井県産のスギ不燃木材を使用しています。建築基準法に沿った内装としつつ、不燃素材の利用によりできるだけ木材を使用することを可能にして、福井県をアピール。また開口部を大きくして、来館者が入りやすい雰囲気を作っています。

  • 所在地:福井県福井市下馬町51-11
  • 公式サイト:https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/bungaku/index.html

ふみの森もてぎ

ふみの森もてぎ写真
引用元:下野新聞SOON公式HP(https://www.shimotsuke.co.jp/articles/gallery/501826?ph=1)

延床面積2,988.74平方メートル、一部が木造と鉄骨造の鉄筋コンクリート造文化交流館の事例です。利用木材のうち、およそ90%を町有林から伐採して使用しました。これらは構造体や仕上材などの無垢材として活用され、地域材の温かみある施設が完成。

また図書情報館には吊り構造とアーチ構造を組み合わせた連接サスペンアーチ構造を採用し、中小断面材でおよそ16メートルの無柱空間を実現しました。体験研修室と町民ギャラリーは、それぞれ平行弦トラス桁構造と重ね垂木によるゲルバー梁構造を採用。木造のさまざまな構造の可能性を実体化しました。

  • 所在地:栃木県芳賀郡茂木町大字茂木1720-1
  • 公式サイト:https://fuminomori.jp/

国際教養大学中嶋記念図書館

国際教養大学中嶋記念図書館写真
引用元:グッドデザイン賞HP(https://www.g-mark.org/award/describe/41646)

国際教養大学中嶋記念図書館写真
引用元:グッドデザイン賞HP(https://www.g-mark.org/award/describe/41646)

延床面積4,055平方メートル、地上2階建てRC造と木造の大学図書館の事例です。建築家の仙田 満氏が設計して、グッドデザイン賞(2014年)や国際建築賞などを受賞しています。

半円形平面と段状断面のある「本のコロシアム」として計画され、地域材がふんだんに使用されている館内は、遮音性と水密性などを備えています。主要木材は秋田杉の径5~8寸、長さ4~8m程度の芯持材です。

外壁はRC造で、入れ子状に秋田杉製材を放射状に配置。伝統的要素の技術である継手や仕口も用いて架構を構成しています。中心に向かって段状に書架と閲覧席が配置され、読書中に見上げれば見事な秋田杉の架構が頭上に位置する芸術作品です。

  • 所在地:秋田県秋田市雄和椿川字奥椿岱
  • 公式サイト:https://web.aiu.ac.jp/library/outline/

流山市立木の図書館


SMB建材株式会社木造建築部HP(https://summit-hr.com/case-search/sbprenew_292/)

「木と共に本を読む」というコンセプトで建てられた千葉県流山市の公立図書館で延床面積は836平方メートル。唐松の集成材を用いた木造2階建ての図書館で、市役所の市民課出張所が併設されています。建物正面を円形とし、ガラス窓を多く配置することで採光性を高め、自然光で本を読めることに配慮されています。また建物正面は円形なのに対し、建物の裏側は樹木の配置を考慮して四角い形状となっているとしています。

  • 所在地:千葉県流山市名都借313-1
  • 公式サイト:https://www.subaru-shoten.co.jp/tosho/ki/

神津島図書館


引用元:JK木造建築グループHP(https://www.jk-teg.com/gallery/public/456)

伊豆七島のひとつ、神津島で初めての公立図書館として建設されました。屋根に採光窓を設置した傾斜屋根部分を設けた、ワンフロアの平屋建てで、延床面積は490平方メートル。“同じ東京都” である多摩地域を産地とする杉の集成材を、合計52立法メートル分利用しているとのことで、「地産地消」の新しいスタイルを実践していると言えるでしょう。

  • 所在地:東京都神津島村974
  • 公式サイト:https://www.vill.kouzushima.tokyo.jp/library/

香美市立図書館 かみーる


引用元:東畑建築事務所 HP(https://www.tohata.co.jp/works/index.php?mode=show&seq=3046)

延床面積1,653平方メートルという広さを誇るワンフロアの図書館で2022年に竣工。鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造をハイブリッドに融合させた工法で建てられているというのが大きな特色となっています。屋根の木製トラスをはじめ、書架や家具、ルーバー、建具や床などに木材をふんだんに用いることで、木の香る町である香美市らしさをアピールしているとしています。

  • 所在地:高知県香美市土佐山田町楠目736
  • 公式サイト:https://www.city.kami.lg.jp/map/toshokan-y.html

陸前高田市立図書館


引用元:SMB建材株式会社木造建築部HP(https://summit-hr.com/case-search/rikuzentakata-tosyokan/)

地域の複合商業施設として親しまれている「アバッセたかた」に隣接しており、大きな片流れの勾配屋根と円形のオブジェに目を惹かれます。建物の躯体はオール木造で、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の併用はなし。館内には木目の柱や梁を利用者に見せるように配置されており、木材が放つ香りや温かみのある雰囲気を楽しめるようにしているのが秀逸です。

  • 所在地:岩手県陸前高田市高田町字館の沖303番地7
  • 公式サイト:https://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/kosodate_kyoiku_bunka/shogaigakushu/toshokan/index.html/

図書館を木造で建てる上での注意点

木造の図書館を建築するには、建築基準法の不燃条件などをクリアする必要がありますので、床面積や使用素材などに考慮する必要があります。

また図書館は大型施設になりますので、木造でどこまで大型の架構を構成できるかがポイントとなります。柱なしにしたいのか、柱を活用した設計にするのか、さまざまな構造技術を比較することが重要です。デザイン性は当然のこと、図書館という機能が前提ですので、使いやすさや防音性なども忘れずに。

木造図書館を建てる際の建築基準

耐火構造と特殊建築物の扱い

図書館は建築基準法において「特殊建築物」に分類され、延床面積や階数によって、耐火または準耐火建築物とする義務が生じます。特に以下の条件を満たす場合は、構造上の制限が厳しくなります。

  • 延床面積が500㎡を超える場合(原則:準耐火建築物)
  • 3階建て以上の図書館を計画する場合(原則:耐火建築物)

木造で建てる場合は、燃えしろ設計、不燃木材、CLTなどの技術を用い、構造体としての耐火性を確保することが求められます。これらは法第27条および法別表第1に基づきます。

避難経路と防火区画

図書館は多数の利用者が同時に滞在する施設であるため、火災時の安全性を高める避難設計が必須です。建築基準法施行令により、2方向避難の確保、内装制限、防火区画の設置、屋内消火設備などが必要とされることがあります。

特に以下のような点に注意が必要です:

  • 図書・書庫スペースに対する防火区画の設置
  • 階避難にかかる廊下幅の確保(幅員1.2m以上推奨)
  • 自動火災報知設備や排煙設備の設置義務(規模に応じて)

内装材の不燃化と視認性配慮

図書館の内装には、原則として不燃材料または準不燃材料の使用が求められます(建築基準法第35条・内装制限規定)。

ただし、CLTや燃えしろ設計などにより木材そのものを安全に露出させる手法も認められており、火災時の炭化層形成や脱落防止の設計がポイントになります。視認性確保のため、木材と採光・照明の組み合わせによるバランス設計も重視されます。

面積基準と利用者動線

図書館には保育施設のような人数あたりの面積基準はないものの、利用者が安全かつ快適に動ける動線確保が不可欠です。以下は計画時に考慮される主な基準です。

  • 閲覧スペース:1人あたり2〜3㎡を目安に設定
  • 書架スペース:1棚あたり0.5〜0.8㎡の通路確保
  • 児童スペース:見通しのよい配置と柔らかい材質の床仕上げ

また、トイレや多目的スペース、点字ブロックの整備など、バリアフリー法に準じた設計も必要です。

木造での大空間実現に必要な構造技術

木造図書館では、無柱空間や大開口を実現するため、構造工学上の工夫が求められます。以下のような構法がよく採用されています。

  • トラス構造やラーメン構造による大スパン対応
  • CLT(直交集成板)を用いた床・壁・屋根の一体構造
  • 中断面・小断面材を多用したサスペンアーチ・ゲルバー梁など

構造計算においては、荷重分散、層間変位、耐震性の検討が不可欠であり、図書館に特有の静寂性や振動抑制性能も同時に求められます。

資料保管における環境性能への配慮

図書館は紙資料・書籍を多数保管する性質上、温湿度管理や日射制御への対応が不可欠です。木造であっても以下の環境条件を満たすように設計されます。

  • 年間通して湿度50〜60%、温度20〜23℃程度の安定環境
  • 紫外線を抑えた間接光やルーバーの設計
  • 外皮性能と通風設計による結露・カビ対策

木材自体の吸湿性を活かしたパッシブな空間設計により、資料にやさしい保管環境を整える事例も増えています。

木造の図書館が建てられる
工務店を探す

建築物別│非住宅木造建築の
構造設計から委託できる会社3選

非住宅木造建築において、構造設計から木材加工、調達、施工まで委託できる企業を紹介。造りたい建物ごとに強みがある企業をピックアップしているので、依頼に合わせて選択してください。

展示場・大規模ホール

大断面集成材を多く必要とする
大規模建築が得意

銘建工業
大東建託 「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」イメージ
引用元HP:銘建工業公式HP
(https://www.meikenkogyo.com/works/2434/)

CLT木材の国内シェアNo.1(※1)を誇る供給力や、大断面集成材専用の工場を保有し量産体制を整えています。大規模建築物のような、多くの構造材が必要になる案件でも、納期を心配することなく安定して木材を確保することができます。

保育園・図書館

広さの異なる空間が混在する
中規模施設が得意

ティンバラム
南三陸町生涯学習センターイメージ
引用元HP:ティンバラム公式HP
(https://timberam.co.jp/works/works-256/)

住宅用柱材に適したMIYAGAWAミヤガワ、大規模で特殊加工に適したHUNDEGGERフンデガー UNITEAMユニチーム 等の多彩な機械を保有。様々な広さ・空間へ適した機械を使い分けることで、設計や加工の自由度が広がります。木の特性をいかし意匠性が高く、愛される建築を実現します。

サステナブル施設・店舗

SDGsがテーマの
環境配慮建築が得意

住友林業
物品販売店舗・事務所イメージ
引用元HP:住友林業公式HP
(https://sfc.jp/mocca/case/case03_07.html)

サステナブル建築物等を推進し、先進的な技術を積極的に取り入れています。コンセプト立案から依頼でき、企業の環境配慮における取組姿勢や思いを設計やデザインなどに落とし込みます。企業イメージの向上や環境配慮の姿勢を対外的にアピールすることに繋がります。

【選定条件】
2024/05/10時点、木造建築物を中心とした普及・発展の取り組みを行う「一般社団法人日本CLT協会」のHPにて、正会員かつ相談先企業として掲載されている35社(※2)のうち、構造設計を委託できる旨を確認できた19社を選定。
そのうち、建築物の依頼別に以下企業を選定しています。
・中規模建築物(ティンバラム)…HUNDEGGERなどのプレカットマシンを豊富に取り扱っていることから、空間に応じたマシンの使い分けが必要な中規模建築に適していると判断。
・大規模建築(銘建工業)…唯一、大規模建築に活用する大断面の木材加工を専門とした工場を持っていることから、大規模建築に適していると判断。
・環境配慮建築(住友林業)…サステナブル建築物等先導事業など新しい技術を取り入れていることから、環境配慮建築に適していると判断。
※1参照元:銘建工業公式(https://www.meikenkogyo.com/recruit/number/)2022年日本CLT協会調べ
※2参照元:一般社団法人日本CLT協会(https://clta.jp/partner/?this_partner_field%5B%5D=構造設計&searchText=