
地域のシンボルとなる庁舎や市民センターなどは、木造建築にすることで実際に地元民の目に触れ香りを体感してもらい、地域の木材利用のアピールにもなります。ここではそんなメリットのある、木造建築の地域センター・庁舎の画像つき事例を特徴とともに紹介しています。
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引用元:和歌山県建築士会公式HP(https://www.wakayama-aba.jp/public/和歌山県%E3%80%80土砂災害啓発センター)
延床面積492平方メートル、木造2階建ての土砂災害に関する啓発施設の事例で、利用木材のすべてが県産材のスギやヒノキという建築です。在来軸組工法を採用して、柱はヒノキ材を、梁や桁はスギ材を使用。構造材のほとんどに、一般流通材サイズの地元製材品を利用しています。
世界遺産である那智山の山間に位置する施設のため、外壁はスギ板鎧下見張りにして存在感がある中にも自然との調和を意識した作りに。一方で内装は和風建築にして、真壁構造にヒノキ柱を現しに、腰壁にはヒノキ板、天井にはスギ板を用いて、内装木質化を行いました。
引用元:七尾市公式HP(https://www.city.nanao.lg.jp/koryu-s/shisetsu/kankokoryucenter.html)
引用元:Holiday HP(https://haveagood.holiday/spots/285111)
展示棟の延床面積459.77平方メートル、交流棟の延床面積296.97平方メートルの、木造平屋建て観光交流センターの事例です。伝統的な七尾町家を模した木造瓦葺き平屋2棟で、利用木材の90%以上が県産材です。間伐材を積極利用しており、防腐処理を施したスギ材の加工溝蓋を建物の周囲に配置して、周囲との違和感がない工夫をしました。
内装は梁を見せる「見せ梁」構造を採用して、吹き抜け空間で木組みを展示する形にしています。また町家の建築に特徴的な板張り、袖壁や格子を設置して、土蔵も建築。土蔵は集成材を使用せずに、伝統工法継承に基づいて無垢材を在来工法で建築しました。
引用元:安藤ハザマ公式HP(https://www.ad-hzm.co.jp/works/japan/0349.php)
引用元:JR東日本設計公式HP(http://www.jred.co.jp/projects/p016.html)
延床面積4,825平方メートルの、S造地上3階、地下1階建ての庁舎の事例です。鉄骨の躯体を福島県産材のカラマツ集成材で耐火被覆をして、木の架構を施した自然な造りながら鉄鋼造の耐火という建築物です。H型鋼の木質ハイブリッド鋼材内蔵型集成材を柱と梁に使用した建築は、公共建築物としては日本初(※)で、いくつかの受賞歴もあります。
内装には利用木材の半分を占める県産材が使用され、床材は県産スギの圧密加工フローリング、家具は国見町産のスギ材、議場は不燃処理をしたスギの横格子を用いて木質化を図りました。
※参照元:国見町庁舎新築工事【PDF】(http://www.sendo-shien.jp/case_archive/download/jirei29.pdf)
引用元:住田町公式HP(https://www.town.sumita.iwate.jp/docs/2015022100018/)
延床面積22,883.48平方メートルの、木造2階建て庁舎の事例です。利用木材の73%が、町産のスギとカラマツです。屋根架構には、町内産カラマツの中断面集成材だけでスパン約22メートルのレンズ型張弦トラスを実現。広大な無柱空間を造りました。
外観に見られるラチス耐力壁は、住田町産のスギ角材を斜め45度に組んで斜め格子形式で建築。見た目の美しさに加えて、横からの荷重に強く耐震性があるほか、採光や通風の点でも機能的なデザインです。
内装にはサクラのフローリングや、特注で作られたスギ集成材のカウンターと執務机など、こちらも木材をふんだんに使用しています。
引用元:東畑建築事務所公式HP(https://www.tohata.co.jp/works/?mode=show&seq=1529)
引用元:東畑建築事務所公式HP(https://www.tohata.co.jp/works/?mode=show&seq=1529)
延床面積2,685平方メートルの、一部鉄筋コンクリート造の木造2階建て市民サービス施設の事例です。使用木材のおよそ96%が県産材のスギとヒノキです。純ラーメン構造で、柱は一般製材の組柱と集成材柱を併用。現しの架構と木ルーバーが吹き抜けのロビーを見事に飾っています。
空調の熱源も木質バイオマスを利用しており、災害時でも一部は稼働が可能です。
引用元:山田憲明構造設計事務所公式HP(https://www.ysd-office.com/2008-%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%95%99%E9%A4%8A%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E4%B8%AD%E5%B6%8B%E8%A8%98%E5%BF%B5%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8)
「本のコロセウム」をテーマとした和傘のようなデザインが特徴的です。半円形平面・段状断面を有しており、すり鉢状に書棚が並んでいます。中心に立つと本に囲まれる感覚を味わえます。秋田杉を使用した和傘状の構造です。屋根面に構造用合板を貼って立体的に安定化させています。階段状に連なる書棚の裏に学習スペースも設置されています。
引用元:和歌山県建築士会公式HP(https://www.wakayama-aba.jp/public/%E5%92%8C%E6%AD%8C%E5%B1%B1%E7%AB%B6%E8%BC%AA%E5%A0%B4%E6%8A%95%E7%A5%A8%E6%89%80)
紀州材を活用した準耐火建築物です。木材あらわし部分には燃え代設計を採用し、13mスパンの柱・梁に大断面集成材を使用しています。紀州ヒノキと杉を組み合わせた対象異等級集成材を採用し、避難安全検証法により内装制限を適用除外としました。外部袖壁に耐力を持たせることで、室内の壁を減らし、開放感のある空間を実現しています。また、深い軒による外壁保護や環境配慮型設計により、CASBEE-A1ランクの省エネ性能を達成しています。
引用元:フードバレーアグリビジネスセンター公式HP(https://www.kumamoto-agribiz.jp/abc/kiji0032688/index.html)
熊本県産のSGEC認証材を活用した木造建築です。構造材には流通規格材を使用し、4本・3本組柱による断面欠損の少ない継手と堅木込栓で強固な在来軸組工法を採用しています。外部袖壁に耐力を持たせ、室内の壁を減らすことで開放感のある空間を実現しました。内外壁や天井に杉材を現しで使用し、県産材の魅力を引き出しています。
引用元:AXISWeb公式HP(https://www.axismag.jp/posts/2020/12/319045.html)
木造・鉄骨・RCのハイブリッド構造を採用しています。展示棟の2階には、約45mの木造切妻屋根が架けられ、福井県産杉の集成材を使用。屋根架構は2丁合わせの登り梁と鋼管トラスで構成され、大きな積雪荷重に対応しています。内装には県産杉材を多用し、木の温かみを感じさせる空間の創出を実現しました。木造と他の構造材を巧みに組み合わせ、軽やかで開放的な展示空間になっています。
引用元:佐藤工業公式HP(https://www.satokogyo.co.jp/works/detail.php?id=514&parent_id=1&category_id=8)
木造と鉄骨造のハイブリッド構造を採用しています。主道場の約70m×60mの大空間を構成する屋根架構に、大臣認定を取得した地元産カラマツ集成材を使用しました。鉄骨トラスに木造梁を添わせることで、軽快な木造格子を形成しています。内装には県産カラマツやアカマツを多用し、床材や壁材、天井材に活用しているのが特徴です。全体で約600m3の県産材を使用し、耐火建築物としての要件を満たしながら、木の温かみと力強さを表現しています。
地域の顔ともなるセンターや庁舎の建築は、構造的な安全面や機能面のほか、地域をアピールする役割も考慮する必要があります。その土地の災害の特徴を踏まえて、耐震などの構造を採用し、同時に地域に馴染みつつも存在感のある外観をデザインするだけでなく、可能な限り地域材を利用することが求められます。内装も木質化することで、周囲により一層木材の利用を促進する非住宅木造建築物となるでしょう。
非住宅木造建築において、構造設計から木材加工、調達、施工まで委託できる企業を紹介。造りたい建物ごとに強みがある企業をピックアップしているので、依頼に合わせて選択してください。
展示場・大規模ホール
大断面集成材を多く必要とする
大規模建築が得意
CLT木材の国内シェアNo.1(※1)を誇る供給力や、大断面集成材専用の工場を保有し量産体制を整えています。大規模建築物のような、多くの構造材が必要になる案件でも、納期を心配することなく安定して木材を確保することができます。
保育園・図書館
広さの異なる空間が混在する
中規模施設が得意
住宅用柱材に適したMIYAGAWA、大規模で特殊加工に適したHUNDEGGER やUNITEAM 等の多彩な機械を保有。様々な広さ・空間へ適した機械を使い分けることで、設計や加工の自由度が広がります。木の特性をいかし意匠性が高く、愛される建築を実現します。
サステナブル施設・店舗
SDGsがテーマの
環境配慮建築が得意
サステナブル建築物等を推進し、先進的な技術を積極的に取り入れています。コンセプト立案から依頼でき、企業の環境配慮における取組姿勢や思いを設計やデザインなどに落とし込みます。企業イメージの向上や環境配慮の姿勢を対外的にアピールすることに繋がります。
【選定条件】
2024/05/10時点、木造建築物を中心とした普及・発展の取り組みを行う「一般社団法人日本CLT協会」のHPにて、正会員かつ相談先企業として掲載されている35社(※2)のうち、構造設計を委託できる旨を確認できた19社を選定。
そのうち、建築物の依頼別に以下企業を選定しています。
・中規模建築物(ティンバラム)…HUNDEGGERなどのプレカットマシンを豊富に取り扱っていることから、空間に応じたマシンの使い分けが必要な中規模建築に適していると判断。
・大規模建築(銘建工業)…唯一、大規模建築に活用する大断面の木材加工を専門とした工場を持っていることから、大規模建築に適していると判断。
・環境配慮建築(住友林業)…サステナブル建築物等先導事業など新しい技術を取り入れていることから、環境配慮建築に適していると判断。
※1参照元:銘建工業公式(https://www.meikenkogyo.com/recruit/number/)2022年日本CLT協会調べ
※2参照元:一般社団法人日本CLT協会(https://clta.jp/partner/?this_partner_field%5B%5D=構造設計&searchText=)