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非住宅木造建築の耐震について

近年、非住宅分野における木造建築の採用が広がるなか、建物の安全性を支える「耐震性能」への関心も高まってきました。特に中大規模建築では、災害時の被害を最小限に抑えるための構造計算や耐震等級の確保は不可欠とされています。本記事では、非住宅木造建築に求められる耐震基準や設計・補強のポイントについて解説しています。

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非住宅木造建築の耐震

木造でありながら安全性の高い非住宅建築を実現するためには、耐震性能の確保が欠かせません。特に中大規模建築では、災害時の避難場所や地域のインフラ機能を担うケースもあるため、構造面での信頼性が強く求められます。

建物の用途や規模に応じて、設計段階から適切な耐震等級の設定や構造検討を行い、必要に応じて補強計画を立てることが重要です。

耐震等級と基準

耐震等級とは、建物の地震に対する強さを数値で示す評価基準のこと。倒壊防止と損傷防止の2つの視点から、建築物がどの程度の地震に耐えられるかを定量的に示します。倒壊防止は、震度6強〜7程度の大地震でも倒壊しにくい構造、損傷防止は、震度5強程度の中規模地震でも損傷を最小限に抑えることを目指す視点となります。

非住宅木造建築においても、住宅性能表示制度に基づき「構造の安定」項目で耐震性能の評価を実施。柱・梁・壁・基礎など、設計段階から構造部材ごとの耐震性を十分に検討し、地震に強い建築物を目指します。

設計・診断のポイント

住宅と比べ、非住宅木造建築は面積が広く構造的な自由度も高いため、設計時における耐震性の確保は、非常に重要なポイント。建築用途が公共施設や商業施設など多様であることから、建物ごとに異なる耐力要求や動線設計に対応した構造設計が求められます。

新築時には、耐震等級の設定に加えて柱・梁・壁の配置バランス、断面サイズ、接合部の構造解析などを通じて、地震荷重に耐えられるかを事前に検討。また、既存建物を活用する場合には、事前に耐震診断を行い、設計図面や現地調査をもとに、構造部材の健全性や接合部の耐力を評価し、耐震補強の要否を判断します。

なお、1981年以降の「新耐震基準」では、震度6強以上の地震でも倒壊しない設計が求められています。

耐震補強の手法

既存の非住宅木造建築に対して耐震補強を行う際には、建物の構造特性や使用状況に応じた補強手法を選択することが重要。代表的な補強方法としては、耐力壁の増設、梁や柱の断面強化、接合部の金物補強、基礎の補修・補強などが行われています。

また、構造計算を通じて想定される地震荷重を算出し、必要な補強内容を精緻に導き出す工程も必要不可欠。既存建築物は新築建築物に比べて柔軟な対応が求められるため、補強設計には高度な知見が必要とされます。

なお、木造の非住宅建築の中でも、特に大規模なもの(学校、福祉施設、商業施設など)については耐震等級の取得が重視されています。

木造建築物に求められる確かな耐震性能

非住宅木造建築においても、住宅と同様に耐震等級や新耐震基準に基づいた設計・診断・補強が求められます。特に中大規模の建築物では、建物用途や規模に応じて高度な構造設計や補強計画が必要不可欠です。近年は、法改正を背景に非住宅分野での木造建築の採用が進み、耐震設計の重要性はさらに高まりました。木材の強度向上や接合部の技術革新も進んでいるため、木造でも十分な耐震性能を実現する時代が到来しています。

非住宅木造の構造設計から
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建築物別│非住宅木造建築の
構造設計から委託できる会社3選

非住宅木造建築において、構造設計から木材加工、調達、施工まで委託できる企業を紹介。造りたい建物ごとに強みがある企業をピックアップしているので、依頼に合わせて選択してください。

         

展示場・大規模ホールの
依頼なら

大断面集成材を多く必要とする
大規模建築が得意

銘建工業
大東建託 「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」イメージ
引用元HP:銘建工業公式HP
(https://www.meikenkogyo.com/works/2434/)

CLT木材の国内シェアNo.1(※1)を誇る供給力や、大断面集成材専用の工場を保有し量産体制を整えています。大規模建築物のような、多くの構造材が必要になる案件でも、納期を心配することなく安定して木材を確保することができます。

         

保育園・図書館の
依頼なら

広さの異なる空間が混在する
中規模施設が得意

ティンバラム
南三陸町生涯学習センターイメージ
引用元HP:ティンバラム公式HP
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住宅用柱材に適したMIYAGAWAミヤガワ、大規模で特殊加工に適したHUNDEGGERフンデガー UNITEAMユニチーム 等の多彩な機械を保有。様々な広さ・空間へ適した機械を使い分けることで、設計や加工の自由度が広がります。木の特性をいかし意匠性が高く、愛される建築を実現します。

サステナブル施設・店舗の
依頼なら


SDGsがテーマの
環境配慮建築が得意

住友林業
物品販売店舗・事務所イメージ
引用元HP:住友林業公式HP
(https://sfc.jp/mocca/case/case03_07.html)

サステナブル建築物等を推進し、先進的な技術を積極的に取り入れています。コンセプト立案から依頼でき、企業の環境配慮における取組姿勢や思いを設計やデザインなどに落とし込みます。企業イメージの向上や環境配慮の姿勢を対外的にアピールすることに繋がります。

【選定条件】
2024/05/10時点、木造建築物を中心とした普及・発展の取り組みを行う「一般社団法人日本CLT協会」のHPにて、正会員かつ相談先企業として掲載されている35社(※2)のうち、構造設計を委託できる旨を確認できた19社を選定。
そのうち、建築物の依頼別に以下企業を選定しています。
・中規模建築物(ティンバラム)…HUNDEGGERなどのプレカットマシンを豊富に取り扱っていることから、空間に応じたマシンの使い分けが必要な中規模建築に適していると判断。
・大規模建築(銘建工業)…唯一、大規模建築に活用する大断面の木材加工を専門とした工場を持っていることから、大規模建築に適していると判断。
・環境配慮建築(住友林業)…サステナブル建築物等先導事業など新しい技術を取り入れていることから、環境配慮建築に適していると判断。
※1参照元:銘建工業公式(https://www.meikenkogyo.com/recruit/number/)2022年日本CLT協会調べ
※2参照元:一般社団法人日本CLT協会(https://clta.jp/partner/?this_partner_field%5B%5D=構造設計&searchText=