
病気やケガで訪れ、場合によっては長い時間を過ごすことになる環境は、従来の白で統一されたものよりも自然の木材にすることでやさしい印象になります。ここではこれまでの医療施設のイメージを大きく変えることのできる、木造建築のクリニックや病院の画像つき事例を特徴とともに紹介しています。
目次閉じる
引用元:新柏クリニックHP(https://shinkashiwa.jp/about/)
引用元:NPO法人ティンバライズHP(https://www.timberize.com/index.html?target=42)
延床面積3,131.92平方メートル、RC造、鉄骨造、木造の混合構造の地上3階、塔屋1階の医療施設の事例です。国産材にこだわって、構造材には長野県産のカラマツを、仕上げ材には静岡県産のヒノキを使用しました。カラマツとモルタルで構成された耐火集成材を柱などに採用しています。
「森林浴のできるクリニック」をテーマとして、大きなガラス張りの窓と木架構と木質仕上材の組合わせがリラックスできる透析ベットルームは、患者さんの負担を軽減できるよう木質化しました。エントランスや外部軒天井にも木材を採用し、ベッドからの目線の高さに緑を配置するなど、内外ともに工夫がされた施設です。
引用元:せいざん病院公式HP(http://seizan-hospital.jp/guide.html#)
引用元:せいざん病院公式HP(http://seizan-hospital.jp/guide.html#)
延床面積5,013平方メートル、一部RC造の木造2階建ての病院です。延床面積が5,000平方メートルを超えてしまう木造なので、中央部をRC造にすることで別棟とし、建築基準法の面積制限をクリアした事例です。使用木材のすべてが県産材で、積層パネルを2階の床材に使用することで、強度と工期短縮を実現。県産材の有効利用にもなりました。
入院病棟は腰壁や床に木材を使用して、やさしい雰囲気にしました。床材は圧密フローリングにして車いすにも対応できるような工夫がされています。
引用元:手塚建築研究所公式HP(http://www.tezuka-arch.com/works/medical/sora-no-mori-clinic/)
引用元:空の森クリニック公式HP(https://soranomori.info/)
引用元:手塚建築研究所公式HP(http://www.tezuka-arch.com/works/medical/sora-no-mori-clinic/)
延床面積2,996.60平方メートル、一部が鉄筋コンクリート造の木造平屋建て軸組工法の事例です。衛生性が必要となる手術室や培養室のエリアを鉄筋コンクリート造にすることで、1,000平方メートル以下に防火区画を確保。そのほかの部分には木材を多用しました。
琉球建築をモダンにアレンジした、待合室などから中庭が見渡せる深い軒と外廊下を設けた設計で、沖縄の気候に適した風通しの良いクリニックに仕上がりました。まるでリゾートに滞在しているようなリラックスした雰囲気を演出しているので、精神的負担の大きい不妊治療のクリニックに適した環境となっています。
引用元:すこやかな社公式HP(http://sukoyakanamori.or.jp/wdoc/?q=grp07)
引用元:木を活かした医療・福祉施設公式HP(https://iryofukushi.kennetserve.jp/article/iryo/01.html)
延床面積4,813平方メートル、軸組工法の木造2階建てと平屋のリハビリテーション施設の事例です。診療棟、リハビリ棟などに分かれており、各棟を1,000平方メートル以下、病棟2階部分を300平方メートル以下にすることで、耐火・準耐火建築物以外のその他の建築物にすることができました。
木の持つ癒やしの効果を得ながら治療ができるよう、施設を木造住宅の感覚にしたいという要望が実現した例で、広々とした外来ロビーや理学療法室は架構をあえて見せる設計をしています。
病室や診察室はもちろん、CTやレントゲン室の壁までもが木材で、放射線を防護するための壁の仕上げにも木材を使用。患者さんがリラックスして受診できる環境が整っています。
引用元:木を活かした医療・福祉施設公式HP(https://iryofukushi.kennetserve.jp/article/iryo/07.html)
引用元:木を活かした医療・福祉施設公式HP(https://iryofukushi.kennetserve.jp/article/iryo/07.html)
延床面積2,981平方メートル、木造と一部鉄筋コンクリート像の地上2階建て病院の事例です。主な構造材には地域産の流通プレカット規格材を活用した合理的な建築で、内装制限がない床や腰壁、サッシは木質化して温かみある院内にしました。
外来ロビーの架構は方杖を用いて樹木をイメージした形にし、天井はすべて木質化、病室出入り口の建具も木製にしています。
引用元:新産住拓まちづくり事業部(https://www.machi.shinsan.com/works/works23.html)
引用元:新産住拓まちづくり事業部(https://www.machi.shinsan.com/works/works23.html)
大きな連結窓が印象的なスタイリッシュな外観のクリニックです。待合ホールは、大開口によって、明るくダイナミックな雰囲気になっています。本物の木を使っており、清潔感と清涼感がある空間です。椅子も木製にしたことで、統一感も生まれ、スッキリとした印象に。外構にもこだわって、昼と夜の見え方が異なります。木のやさしさが映えるデザインです。
引用元:SMB建材株式会社(https://summit-hr.com/case-search/sbprenew_30/)
引用元:SMB建材株式会社(https://summit-hr.com/case-search/sbprenew_30/)
広い敷地を利用したクリニックです。あえて小さな窓を並べて配置することで、ちょうど良い光を取り込めるようになっています。オレンジとベージュのツートンカラーの外壁に緑の屋根と、温かみがあり落ち着いた配色です。内装はベージュを基調にしており、柱や梁などの木材が引き立つデザインになっています。
引用元:藤木隆男建築研究所(http://www.ftaa.co.jp/main/ja/work/ed/ed_201003/ed_201003_05.html)
引用元:藤木隆男建築研究所(http://www.ftaa.co.jp/main/ja/work/ed/ed_201003/ed_201003_05.html)
住宅スケールの空間による癒し効果のある医療施設として設計された産院です。中庭を中心にして、診察室と入院エリア、お産・手術室エリア、デイルームが囲むように配置されています。デイルームの柱・梁はベイマツ集成材、床はタモフローリングを採用。階段や家具も木製で統一されています。分娩室も床にスギ縁甲板を使用しています。
引用元:住友林業(https://sfc.jp/information/news/2017/2017-10-10.html)
引用元:住友林業(https://sfc.jp/information/news/2017/2017-10-10.html)
「リハビリテーション・リゾート」をコンセプトに患者がリラックスしてリハビリに取り組める環境を創っています。準耐火建築物で、延べ床面積1500㎡以下の燃えしろ設計です。火災時に焼失する部分を想定して断面寸法を考えており、床・壁・天井に木をたくさん使用しています。スプリンクラー設備を設置したことで、内装制限の適用から除外されています。
引用元:藤木隆男建築研究所(http://www.ftaa.co.jp/ja/work/ed/ed_200203/ed_200203_05.html)
引用元:藤木隆男建築研究所(http://www.ftaa.co.jp/ja/work/ed/ed_200203/ed_200203_05.html)
庭と個室が連続する緩和ケア病棟です。内外に木を使用して、温かみのある空間を創っています。個室は壁の一部に練り付け合板で木質化しており、ベッドヘッドの棚や収納などの家具も木製です。個室から出入りできるデッキも木製にしており、中庭を囲む個室と戸外の親和性を高めています。木製サッシを採用し、落ち着いた住宅のような印象です。
患者が落ち着ける空間づくりと、医療機能に必要な安全性を両立させることが、木造クリニック計画の鍵です。木材が持つ視覚的な温かさや香りは、待合室や病室で感じる心理的ストレスを和らげる効果が期待できます。
一方で、耐火・準耐火区画の設定や RC 造との混構造、車椅子・ストレッチャー走行に耐える床材の採用、重量機器に対応した床強度、感染症対策を踏まえた換気計画や動線分離、内装制限を満たす材料選定など、実務面での配慮が欠かせません。壁や天井へ木材を使う場合は腰壁や化粧梁など部分的にとどめ、清掃性とのバランスを取るといった工夫も必要です。
有床診療所(患者収容施設あり・特殊建築物扱い)
無床診療所(外来のみ・一般建築物扱い)
耐火性能の判定は「病床の有無」「階数」「延床面積」「立地する防火区分」によって変わります。
非住宅木造建築において、構造設計から木材加工、調達、施工まで委託できる企業を紹介。造りたい建物ごとに強みがある企業をピックアップしているので、依頼に合わせて選択してください。
展示場・大規模ホールの
依頼なら
大断面集成材を多く必要とする
大規模建築が得意
CLT木材の国内シェアNo.1(※1)を誇る供給力や、大断面集成材専用の工場を保有し量産体制を整えています。大規模建築物のような、多くの構造材が必要になる案件でも、納期を心配することなく安定して木材を確保することができます。
保育園・図書館の
依頼なら
広さの異なる空間が混在する
中規模施設が得意
住宅用柱材に適したMIYAGAWA、大規模で特殊加工に適したHUNDEGGER やUNITEAM 等の多彩な機械を保有。様々な広さ・空間へ適した機械を使い分けることで、設計や加工の自由度が広がります。木の特性をいかし意匠性が高く、愛される建築を実現します。
サステナブル施設・店舗の
依頼なら
SDGsがテーマの
環境配慮建築が得意
サステナブル建築物等を推進し、先進的な技術を積極的に取り入れています。コンセプト立案から依頼でき、企業の環境配慮における取組姿勢や思いを設計やデザインなどに落とし込みます。企業イメージの向上や環境配慮の姿勢を対外的にアピールすることに繋がります。
【選定条件】
2024/05/10時点、木造建築物を中心とした普及・発展の取り組みを行う「一般社団法人日本CLT協会」のHPにて、正会員かつ相談先企業として掲載されている35社(※2)のうち、構造設計を委託できる旨を確認できた19社を選定。
そのうち、建築物の依頼別に以下企業を選定しています。
・中規模建築物(ティンバラム)…HUNDEGGERなどのプレカットマシンを豊富に取り扱っていることから、空間に応じたマシンの使い分けが必要な中規模建築に適していると判断。
・大規模建築(銘建工業)…唯一、大規模建築に活用する大断面の木材加工を専門とした工場を持っていることから、大規模建築に適していると判断。
・環境配慮建築(住友林業)…サステナブル建築物等先導事業など新しい技術を取り入れていることから、環境配慮建築に適していると判断。
※1参照元:銘建工業公式(https://www.meikenkogyo.com/recruit/number/)2022年日本CLT協会調べ
※2参照元:一般社団法人日本CLT協会(https://clta.jp/partner/?this_partner_field%5B%5D=構造設計&searchText=)