
カーボンニュートラルやZEB(Net Zero Energy Building)など世界全体での温暖化対策が進められる中、現在非住宅分野において木造建築が注目されています。ここでは、木造建築が「環境性能」「快適性」「コスト」のバランスを取れる点に注目し、省エネと木造化の相性が良い理由について解説しています。
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近年、学校や保育園、オフィス、店舗などで木造採用が広がっています。
その背景は、「2050年までに世界全体でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」を達成し、パリ協定の「世界の平均気温上昇を産業革命前から1.5℃以内に抑える」ことが国際的な目標として掲げられている地球温暖化対策です。
日本では炭素を固定する性質を持つ再生可能資源である木材を活用する施策が推進されています。コンクリートや鉄骨に代わり、中高層建物を建築できる、軽量・高強度・耐火性を持つCLT(直交集成板)という、木材を材料とする建材が開発され、その利用を後押しするために、大規模な木造建物がより容易に建築できるよう建築基準法と、公共建築物等木材利用促進法を整備し地方自治体や公共施設において木材利用を推奨するようになりました。
ここでは、木造建築の省エネ性能について解説していきます。「木材が持つ断熱性能」「断熱材や開口部の遮熱対策」「屋根や外壁などの断熱設計」の3つ観点から説明していきます。
木材の特徴として、多孔質の細胞構造を持っており空気を多く含むので、コンクリートや鉄と比較すると高い断熱性を持っています。そして、外の熱気や冷気を室内に伝えにくい性質があります。
さらに木材には適度な熱容量があり、一度温まると冷めにくく、一度冷えると温まりにくい性質を持つので、室内の急激な温度変化を和らげることが期待でき、冷暖房による負荷も抑えやすい建材です。
より高い断熱性を得るため、断熱材としてグラスウール、セルロースファイバー、発泡系断熱材などが使われ、壁・天井・床に断熱材をしっかり充填する「充填断熱」が一般的に用いられ、断熱効果を高め冷暖房効率を向上させています。
開口部についても木製サッシや樹脂サッシとLow-E複層ガラスを組み合わせるなどの工夫によって、窓からの熱が失われるのを防いでいます。また、気密性が劣ることが木造の弱点でしたが、現場での気密シート施工や気密テープ処理で気密性を確保できるようになっています。
屋根や外壁に対しても、外断熱や充填断熱を組み合わせることで高い断熱性能が期待できます。特に屋根は太陽の光の影響が大きいことから、通気層をもうけるなどして熱を排出するための二重構造などが採用されています。
また、家の内部については木材の調湿効果に加えて、大空間でも上下の温度差が生じにくいように空調システムやシーリングファンなどを組み合わせた設計が一般的となっています。
まずパッシブデザインを取り入れてエネルギー消費を抑える手法が挙げられます。例えば夏場の日差しを遮るために深い軒を設ける、逆に冬場は日差しを取り込めるようにすることで暖房負荷を下げる、高窓を設置して照明で使用する電力を削減しつつ室内の明るさ確保するなどの方法などが活用されています。
そのほかにも、LED照明や全熱交換換気、ヒートポンプ空調など高効率設備を組み合わせることによって、「ZEB Ready(省エネ技術を活かし、設計段階において年間の一次エネルギー消費量を50%以上削減した住宅建築物)」を目指すことできます。
また、効率的な省エネ対策を支援するBEMS(Building Energy Management System)や、IoTによる制御を取り入れた運用の最適化などの方策も実用化されています。
木材によって炭素を固定するカーボンストック効果によって、運用時はもちろん建設段階から環境負荷を低減できます。木材の利用によって地球温暖化防止の効果をより高めることが期待されています。
このように、木材を使用することでエネルギー消費量の削減に繋げられることに加えて、快適な職場や施設環境作りに貢献できます。さらに地域の木材を使用することにより、地域の活性化にも寄与するといった効果も期待できます。
非住宅木造は、「ぬくもりが感じられるデザイン」と「高い省エネ性能」を両立できる、次世代の建築選択肢です。環境問題へ対応するため、木造住宅は商業施設、オフィス、倉庫、工場、教育施設などさまざまな施設で採用されています。国や自治体が補助金・税制優遇・支援制度を整備しています。この機会に非住宅木造の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
非住宅木造建築において、構造設計から木材加工、調達、施工まで委託できる企業を紹介。造りたい建物ごとに強みがある企業をピックアップしているので、依頼に合わせて選択してください。
展示場・大規模ホールの
依頼なら
大断面集成材を多く必要とする
大規模建築が得意

CLT木材の国内シェアNo.1(※1)を誇る供給力や、大断面集成材専用の工場を保有し量産体制を整えています。大規模建築物のような、多くの構造材が必要になる案件でも、納期を心配することなく安定して木材を確保することができます。
保育園・図書館の
依頼なら
広さの異なる空間が混在する
中規模施設が得意

住宅用柱材に適したMIYAGAWA、大規模で特殊加工に適したHUNDEGGER やUNITEAM 等の多彩な機械を保有。様々な広さ・空間へ適した機械を使い分けることで、設計や加工の自由度が広がります。木の特性をいかし意匠性が高く、愛される建築を実現します。
サステナブル施設・店舗の
依頼なら
SDGsがテーマの
環境配慮建築が得意
サステナブル建築物等を推進し、先進的な技術を積極的に取り入れています。コンセプト立案から依頼でき、企業の環境配慮における取組姿勢や思いを設計やデザインなどに落とし込みます。企業イメージの向上や環境配慮の姿勢を対外的にアピールすることに繋がります。
【選定条件】
2024/05/10時点、木造建築物を中心とした普及・発展の取り組みを行う「一般社団法人日本CLT協会」のHPにて、正会員かつ相談先企業として掲載されている35社(※2)のうち、構造設計を委託できる旨を確認できた19社を選定。
そのうち、建築物の依頼別に以下企業を選定しています。
・中規模建築物(ティンバラム)…HUNDEGGERなどのプレカットマシンを豊富に取り扱っていることから、空間に応じたマシンの使い分けが必要な中規模建築に適していると判断。
・大規模建築(銘建工業)…唯一、大規模建築に活用する大断面の木材加工を専門とした工場を持っていることから、大規模建築に適していると判断。
・環境配慮建築(住友林業)…サステナブル建築物等先導事業など新しい技術を取り入れていることから、環境配慮建築に適していると判断。
※1参照元:銘建工業公式(https://www.meikenkogyo.com/recruit/number/)2022年日本CLT協会調べ
※2参照元:一般社団法人日本CLT協会(https://clta.jp/partner/?this_partner_field%5B%5D=構造設計&searchText=)